この章で扱うこと
第一章では、事象と確率を集合の言葉で整理しました。
第二章では、偶然に得られる値を 確率変数 として表し、その値の出やすさを 確率分布 として扱います。
この章では、次の内容を扱います。
- 確率変数
- 確率関数
- 確率密度関数
- 期待値
- 確率母関数
- 積率母関数
- 特性関数
- キュムラント母関数
- 変数変換
統計検定1級では、公式を覚えるだけでは足りません。
「どの関数が、分布のどんな情報を持っているか」を理解しておくことが重要です。
確率変数
確率変数 とは、偶然の結果に数値を対応させる関数です。
数学的には、標本空間 Ω の各結果 ω に対して、実数 X(ω) を返す関数と考えます。
X:Ω→R
例えば、1錠の製剤について「溶出率を測る」実験を考えます。
実験の結果そのものは、温度、撹拌、錠剤の個体差などを含む複雑な出来事です。
しかし、解析ではそれを「30分後の溶出率 X」という数値にまとめます。
ここで X が確率変数です。
確率変数には、大きく分けて2種類あります。
| 種類 | 取りうる値 | 例 |
|---|
| 離散型確率変数 | 0, 1, 2, … のように数えられる値 | 副作用の発現人数、変異コロニー数 |
| 連続型確率変数 | 区間内の実数値 | 血中濃度、体重、AUC、溶出率 |
確率関数
離散型確率変数 X に対して、
p(x)=P(X=x)
で定義される関数を 確率関数、または確率質量関数といいます。
確率関数は、次の2つを満たします。
p(x)≥0
かつ、
x∑p(x)=1
です。
例えば、ある副作用が1人の患者に起こる確率を π とし、n 人の患者を観察するとします。
副作用が起きた人数を X とすると、独立性を仮定できる場合、
X∼Bin(n,π)
と表せます。
このとき確率関数は、
P(X=x)=(xn)πx(1−π)n−x(x=0,1,…,n)
です。
この式が出てくる理由も確認しておきます。
n 人のうち、ちょうど x 人に副作用が出るには、
- 副作用が出る人を x 人選ぶ
- 選ばれた x 人では副作用が起こる
- 残りの n−x 人では副作用が起こらない
という3つを考えます。
副作用が出る人の選び方は、
(xn)
通りです。
特定の x 人に副作用が出て、残りに出ない確率は、独立性より
πx(1−π)n−x
です。
したがって、両方を掛けて、
P(X=x)=(xn)πx(1−π)n−x
となります。
離散型では、各点の高さそのものが確率です。棒の高さを全部足すと 1 になります。
確率密度関数
連続型確率変数 X では、特定の1点を取る確率は通常 0 です。
例えば、血中濃度がちょうど 10.000000⋯ になる確率は 0 と考えます。
その代わりに、区間に入る確率を考えます。
関数 f(x) があって、
P(a≤X≤b)=∫abf(x)dx
と書けるとき、f(x) を 確率密度関数 といいます。
確率密度関数は、次の2つを満たします。
f(x)≥0
かつ、
∫−∞∞f(x)dx=1
です。
大事なのは、f(x) は確率そのものではなく、確率の「濃さ」を表す関数だという点です。
連続型では、面積が確率です。
連続型では、曲線の下の面積が確率です。ある1点での高さは確率ではありません。
分布関数
離散型と連続型をまとめて扱うとき、分布関数 が便利です。
F(x)=P(X≤x)
と定義します。
離散型では、
F(x)=t≤x∑P(X=t)
連続型では、
F(x)=∫−∞xf(t)dt
です。
統計検定1級では、確率関数や密度関数だけでなく、分布関数で議論できるようにしておくと見通しがよくなります。
期待値
期待値 は、確率変数の平均的な値を表します。
離散型では、
E[X]=x∑xP(X=x)
連続型では、
E[X]=∫−∞∞xf(x)dx
です。
より一般に、関数 g(X) の期待値は、離散型なら
E[g(X)]=x∑g(x)P(X=x)
連続型なら
E[g(X)]=∫−∞∞g(x)f(x)dx
です。
分散も期待値で表せます。
Var(X)=E[(X−E[X])2]
計算では、
Var(X)=E[X2]−(E[X])2
をよく使います。
この式は、定義から展開して導けます。
μ=E[X] とおくと、
Var(X)=E[(X−μ)2]
です。
二乗を展開すると、
(X−μ)2=X2−2μX+μ2
なので、
Var(X)=E[X2−2μX+μ2]
です。
期待値の線形性より、
E[X2−2μX+μ2]=E[X2]−2μE[X]+μ2
となります。
ここで E[X]=μ なので、
E[X2]−2μ2+μ2=E[X2]−μ2
です。
したがって、
Var(X)=E[X2]−(E[X])2
が得られます。
薬学で期待値を見るときは、「長く繰り返したときの平均的な結果」と考えると理解しやすいです。
例えば、1人あたりの副作用発現数、1検体あたりの陽性反応数、投与後の平均血中濃度などが期待値のイメージです。
薬学・生命科学でよく見る分布
確率分布は、データの形に合わせて選ぶ道具です。
薬学や生命科学では、次のように対応づけると見通しがよくなります。
ここでの主役は、「分布名を覚えること」ではありません。
むしろ、
観測した情報⇒確率分布⇒推定できる量⇒研究上の判断
という流れを作ることです。
例えば、副作用の有無からは副作用リスクを、コロニー数からはイベント発生率や過分散を、IC50 からは典型的な効力や倍率差を、AIスコアからは真のヒットである事後確率を学べます。
データ型を見れば、候補となる分布と、そこから学べる薬学・生命科学上の量が見えてきます。
| データの例 | 候補になる分布 | 確率変数のイメージ |
|---|
| 患者ごとの副作用の有無 | ベルヌーイ分布 | 起きたら 1、起きなければ 0 |
| n 人中の副作用発現人数 | 二項分布 | 0人から n 人までの人数 |
| 1視野あたりのコロニー数 | ポアソン分布 | 一定範囲内で起こるイベント数 |
| 次の陽性ウェルが出るまでの試行回数 | 幾何分布 | 初めて成功するまでの回数 |
| 血中濃度、AUC、発現量 | 対数正規分布 | 正の連続量で右に裾が長い |
| 測定誤差が積み重なった値 | 正規分布 | 平均の周りに左右対称にばらつく |
| 生存時間、分解までの時間 | 指数分布、ワイブル分布 | 時間が長くなるほどイベントが起こる |
| IC50 や EC50 の推定値 | 対数スケール上の正規近似 | 濃度の倍率差を扱う |
例えば、細胞毒性試験で「ある濃度で生存率が 50% 未満になるか」を見るなら、1ウェルごとの判定はベルヌーイ分布で表せます。
同じ条件のウェルを n 個用意して、何ウェルが毒性ありになったかを数えるなら二項分布です。
一方、コロニー数、変異数、細胞内のスポット数のように、一定の領域内で起こる「数」を扱うときはポアソン分布が候補になります。
ただし、実データでは細胞ごとの状態差やプレート位置の影響で、ポアソン分布より分散が大きくなることがあります。
このような現象を 過分散 と呼びます。
過分散が強い場合は、負の二項分布などを考えることがあります。
この対応を研究の言葉に直すと、次のようになります。
| 観測する情報 | 学べること | 研究上の使い道 |
|---|
| 副作用が出たかどうか | 副作用リスク、群間差 | 用量設定、安全性シグナルの検討 |
| 細胞が生存したかどうか | 生存率、毒性確率 | 濃度範囲の絞り込み |
| コロニー数、スポット数 | 発生率、過分散、細胞間の不均一性 | 処理効果や耐性出現の評価 |
| 血中濃度、AUC、Cmax | 平均的な曝露量、個体差 | 薬物動態、TDM、用量調整 |
| IC50、EC50 | 典型的な効力、倍率差 | 化合物比較、構造活性相関 |
| AIモデルのスコア | 真のヒット確率、優先順位 | 実験する候補化合物の選定 |
このように、確率分布を選ぶことは「データをきれいな数式に押し込む」ことではありません。
自分の研究で知りたい量を、観測できる情報から取り出すための設計です。
確率母関数
確率母関数 は、非負整数値をとる離散型確率変数に対して使う道具です。
確率変数 X が 0,1,2,… をとるとき、
GX(s)=E[sX]
と定義します。
確率関数を使うと、
GX(s)=x=0∑∞P(X=x)sx
です。
つまり、確率母関数は、確率 P(X=x) を係数として並べた関数です。
係数を読めば分布が分かります。
また、
GX(1)=1
であり、
GX′(1)=E[X]
が成り立ちます。
さらに、
GX′′(1)=E[X(X−1)]
です。
なぜ微分で期待値が出るかも見ておきます。
GX(s)=x=0∑∞P(X=x)sx
を s で微分すると、
GX′(s)=x=1∑∞xP(X=x)sx−1
です。
ここで s=1 を代入すると、
GX′(1)=x=1∑∞xP(X=x)=E[X]
となります。
同じように2回微分すると、
GX′′(s)=x=2∑∞x(x−1)P(X=x)sx−2
なので、
GX′′(1)=x=2∑∞x(x−1)P(X=x)=E[X(X−1)]
です。
ここで X2=X(X−1)+X だから、
E[X2]=GX′′(1)+GX′(1)
です。
したがって分散は、
Var(X)=GX′′(1)+GX′(1)−{GX′(1)}2
と計算できます。
例として、X∼Bin(n,π) のとき、
GX(s)={(1−π)+πs}n
です。
これは二項定理から導けます。
GX(s)=x=0∑nsx(xn)πx(1−π)n−x
右辺を少し並べ替えると、
GX(s)=x=0∑n(xn)(πs)x(1−π)n−x
です。
二項定理
(a+b)n=x=0∑n(xn)axbn−x
に a=πs, b=1−π を代入すると、
GX(s)={πs+(1−π)}n
となります。
これは、二項分布の期待値や分散を計算する強力な近道になります。
積率母関数
積率母関数 は、
MX(t)=E[etX]
で定義されます。
名前の通り、積率、つまり E[X], E[X2], E[X3] などを取り出せます。
条件がよい場合、
MX(r)(0)=E[Xr]
が成り立ちます。
この関係も、指数関数の性質から確認できます。
まず、
etX
を t で微分すると、
dtdetX=XetX
です。
したがって、
MX′(t)=dtdE[etX]=E[XetX]
と考えられます。
ここで t=0 を代入すると e0=1 なので、
MX′(0)=E[X]
です。
同じように2回微分すると、
MX′′(t)=E[X2etX]
であり、
MX′′(0)=E[X2]
となります。
一般に r 回微分すれば Xr が前に出るので、
MX(r)(0)=E[Xr]
が得られます。
特に、
MX′(0)=E[X]
MX′′(0)=E[X2]
です。
積率母関数の大事な性質は、独立な確率変数の和に強いことです。
X と Y が独立なら、
MX+Y(t)=MX(t)MY(t)
となります。
これも途中式で確認します。
MX+Y(t)=E[et(X+Y)]
指数法則より、
et(X+Y)=etXetY
なので、
MX+Y(t)=E[etXetY]
です。
X と Y が独立なら、etX と etY も独立なので、
E[etXetY]=E[etX]E[etY]=MX(t)MY(t)
となります。
例えば、独立な副作用発現の指標 X1,…,Xn を足した人数 S=X1+⋯+Xn の分布を考えるとき、母関数は計算を整理してくれます。
特性関数
特性関数 は、
φX(t)=E[eitX]
で定義されます。
ここで i は虚数単位です。
積率母関数と似ていますが、特性関数はより広い範囲で必ず存在します。
なぜなら、
∣eitX∣=1
なので、期待値が発散しにくいからです。
統計検定1級では、特性関数について次の点を押さえておくとよいです。
- 特性関数は分布を一意に決める
- 独立な和では特性関数が積になる
- 中心極限定理の証明で重要な役割を持つ
X と Y が独立なら、
φX+Y(t)=φX(t)φY(t)
です。
ここで「必ず存在する」とは、期待値として有限な値が定まるという意味です。
連続型なら、
φX(t)=∫−∞∞eitxf(x)dx
ですが、絶対値を取ると
∣eitxf(x)∣=f(x)
です。
密度関数は全体で積分すると 1 なので、
∫−∞∞∣eitxf(x)∣dx=∫−∞∞f(x)dx=1
となります。
このため、積率母関数が発散する分布でも、特性関数は扱えることがあります。
積率母関数が「使えるときに便利な道具」だとすると、特性関数は「理論上かなり頼れる道具」です。
キュムラント母関数
キュムラント母関数 は、積率母関数の対数で定義されます。
KX(t)=logMX(t)
この関数を微分すると、平均や分散に対応する量が出てきます。
KX′(0)=E[X]
KX′′(0)=Var(X)
この2つも導出しておきます。
まず、
KX(t)=logMX(t)
なので、合成関数の微分より、
KX′(t)=MX(t)MX′(t)
です。
MX(0)=E[e0]=1、MX′(0)=E[X] だから、
KX′(0)=MX(0)MX′(0)=E[X]
です。
次にもう一度微分します。
KX′′(t)={MX(t)}2MX′′(t)MX(t)−{MX′(t)}2
です。
t=0 を代入すると、
KX′′(0)=MX′′(0)−{MX′(0)}2
となります。
ここで MX′′(0)=E[X2]、MX′(0)=E[X] なので、
KX′′(0)=E[X2]−(E[X])2=Var(X)
です。
一般に、r 回微分した値
κr=KX(r)(0)
を第 r キュムラントといいます。
キュムラントの便利な点は、独立な和に対して足し算になることです。
X と Y が独立なら、
KX+Y(t)=KX(t)+KY(t)
です。
これは、対数を取ることで積が和に変わるからです。
標本和や標本平均の分布を考えるとき、キュムラントは「平均や分散がどう積み上がるか」を見やすくしてくれます。
母関数の比較
母関数は名前が似ていて混乱しやすいので、役割を表で整理します。
| 名前 | 定義 | 主な用途 |
|---|
| 確率母関数 | GX(s)=E[sX] | 非負整数値の分布、個数データ |
| 積率母関数 | MX(t)=E[etX] | 積率の計算、独立な和 |
| 特性関数 | φX(t)=E[eitX] | 分布の一意性、極限定理 |
| キュムラント母関数 | KX(t)=logMX(t) | 平均、分散、高次キュムラント |
薬学の例でいうと、コロニー数や副作用発現人数のような個数データでは確率母関数が自然です。
血中濃度やAUCのような連続量では、積率母関数や特性関数を通じて平均、分散、近似分布を調べます。
変数変換
確率変数 X から新しい確率変数
Y=g(X)
を作ることを 変数変換 といいます。
薬学では、濃度を対数変換したり、用量を体重あたりに換算したり、血中濃度からAUCを計算したりします。
これらはすべて、元の変数から新しい変数を作る操作です。
離散型の変数変換
離散型では、同じ Y の値を作る X の値を集めて足します。
P(Y=y)=x:g(x)=y∑P(X=x)
例えば、X を1日の服薬忘れ回数、Y を「服薬忘れがあったかどうか」とします。
Y={01(X=0)(X≥1)
なら、
P(Y=1)=P(X≥1)=1−P(X=0)
です。
連続型の変数変換
連続型で Y=g(X) とし、g が単調で逆関数を持つとします。
x=g−1(y) とおくと、
fY(y)=fX(g−1(y))dydg−1(y)
です。
この絶対値の部分を ヤコビアン と呼びます。
密度は「面積が確率」なので、横軸を伸ばしたり縮めたりした分を補正する必要があります。
導出も確認します。
まず、g が単調増加だとします。
このとき、
FY(y)=P(Y≤y)
です。
Y=g(X) なので、
FY(y)=P(g(X)≤y)
です。
単調増加なら、両辺に逆関数を使って、
g(X)≤y⟺X≤g−1(y)
です。
したがって、
FY(y)=P(X≤g−1(y))=FX(g−1(y))
となります。
両辺を y で微分すると、
fY(y)=fX(g−1(y))dydg−1(y)
です。
単調減少の場合は不等号の向きが変わるため符号が反対になります。
密度は負になれないので、単調増加と単調減少をまとめて、
fY(y)=fX(g−1(y))dydg−1(y)
と書きます。
変数変換では、値だけでなく密度の形も変わります。連続型ではヤコビアンで面積を保ちます。
例:対数正規分布
薬物動態では、血中濃度やAUCが右に長い分布を持つことがあります。
このとき、
Y=logX
が正規分布に近いなら、X は対数正規分布に従うと考えられます。
Y∼N(μ,σ2) で X=eY とすると、X の密度は
fX(x)=xσ2π1exp{−2σ2(logx−μ)2}(x>0)
です。
ここで x1 がヤコビアンに対応します。
対数変換は、薬学データでとてもよく出てくる変数変換です。
例題1:副作用発現人数の期待値
ある薬剤で、患者1人に軽度の副作用が起こる確率を π=0.08 とします。
20人の患者を独立に観察し、副作用が起きた人数を X とします。
- X の分布を答えてください。
- E[X] と Var(X) を求めてください。
- P(X=0) を求めてください。
解答
各患者について、副作用が起きるかどうかをベルヌーイ試行と見ます。
20人を独立に観察するので、
X∼Bin(20,0.08)
です。
二項分布の期待値と分散は、
E[X]=nπ
Var(X)=nπ(1−π)
です。
ここではこの公式をそのまま使わず、ベルヌーイ変数の和として確認します。
患者 i に副作用が起きたら Xi=1、起きなければ Xi=0 とします。
すると、
X=X1+⋯+X20
です。
各 Xi は、
P(Xi=1)=0.08,P(Xi=0)=0.92
を満たします。
したがって、
E[Xi]=1⋅0.08+0⋅0.92=0.08
です。
期待値の線形性より、
E[X]=E[X1+⋯+X20]=E[X1]+⋯+E[X20]
なので、
E[X]=20⋅0.08=1.6
です。
次に分散を計算します。
Xi は 0 または 1 だけを取るので、Xi2=Xi です。
したがって、
E[Xi2]=E[Xi]=0.08
です。
分散の公式より、
Var(Xi)=E[Xi2]−(E[Xi])2=0.08−(0.08)2
です。
計算すると、
0.08−(0.08)2=0.08−0.0064=0.0736
です。
独立な確率変数の和では分散が足せるので、
Var(X)=20⋅0.0736=1.472
となります。
したがって、
E[X]=20⋅0.08=1.6
Var(X)=20⋅0.08⋅0.92=1.472
です。
また、
P(X=0)=(020)0.080(0.92)20=0.9220≈0.189
です。
副作用確率が8%でも、20人観察して1人も出ない確率は約18.9%あります。
「観察されなかった」ことは「起こらない」ことを意味しない、という点が重要です。
例題2:服薬忘れ回数と確率母関数
ある患者の1週間の服薬忘れ回数 X がポアソン分布
X∼Poisson(λ)
に従うとします。
- 確率母関数 GX(s) を求めてください。
- E[X] を確率母関数から求めてください。
解答
ポアソン分布の確率関数は、
P(X=x)=e−λx!λx(x=0,1,2,…)
です。
したがって、
GX(s)=E[sX]=x=0∑∞sxe−λx!λx
です。
整理すると、
GX(s)=e−λx=0∑∞x!(λs)x=e−λeλs=eλ(s−1)
となります。
途中で使った
x=0∑∞x!(λs)x=eλs
は、指数関数のマクローリン展開
eu=x=0∑∞x!ux
に u=λs を代入したものです。
数IIIの範囲を少し越えて見える場合は、「指数関数はこの無限級数で表せる」と受け取れば大丈夫です。
統計検定1級では、ポアソン分布の母関数計算で頻繁に出てきます。
期待値は、
GX′(1)=E[X]
で求められます。
GX′(s)=λeλ(s−1)
なので、
GX′(1)=λ
です。
よって、
E[X]=λ
となります。
例題3:血中濃度の対数変換
ある薬の投与後血中濃度 X が正の値をとり、
Y=logX
が正規分布 N(μ,σ2) に従うとします。
- X の分布名を答えてください。
- X の密度関数を求めてください。
- なぜ薬物動態で対数変換がよく使われるか説明してください。
解答
logX が正規分布に従うので、X は 対数正規分布 に従います。
Y=logX の逆変換は、
x=ey
です。
密度を求めたい変数は X なので、逆に
y=logx
と書いておきます。
Y の密度は正規分布の密度なので、
fY(y)=σ2π1exp{−2σ2(y−μ)2}
です。
密度を Y から X に変換するときは、
fX(x)=fY(logx)dxdlogx
を使います。
ここで、
dxdlogx=x1
です。
したがって、
fY(logx)=σ2π1exp{−2σ2(logx−μ)2}
であり、これに x1 を掛けるので、
fX(x)=xσ2π1exp{−2σ2(logx−μ)2}(x>0)
となります。
薬物動態で対数変換がよく使われる理由は、濃度やAUCが負にならず、個体差が「足し算」より「倍率」で現れやすいからです。
例えば、ある患者のAUCが別の患者の2倍という違いは、元のスケールでは右に長い分布を作りやすいです。
対数を取ると倍率の違いが加法的な違いになり、正規分布に近づくことがあります。
例題4:キュムラント母関数で二項分布を見る
X∼Bin(n,π) とします。
- 積率母関数 MX(t) を求めてください。
- キュムラント母関数 KX(t) を求めてください。
- KX′(0) と KX′′(0) を確認してください。
解答
二項分布の積率母関数は、
MX(t)={(1−π)+πet}n
です。
したがって、キュムラント母関数は、
KX(t)=logMX(t)=nlog{(1−π)+πet}
です。
積率母関数を導出すると、まず
MX(t)=E[etX]=x=0∑netxP(X=x)
です。
二項分布の確率関数を代入すると、
MX(t)=x=0∑netx(xn)πx(1−π)n−x
となります。
etxπx=(πet)x なので、
MX(t)=x=0∑n(xn)(πet)x(1−π)n−x
です。
二項定理より、
MX(t)={(1−π)+πet}n
が得られます。
1回微分すると、
KX′(t)=n(1−π)+πetπet
なので、
KX′(0)=nπ
です。
これは二項分布の期待値です。
さらに2回微分すると、
KX′′(0)=nπ(1−π)
となります。
この2回微分も省略せずに書くと、まず
KX′(t)=n(1−π)+πetπet
です。
ここで
A(t)=πet,B(t)=(1−π)+πet
とおくと、
KX′(t)=nB(t)A(t)
です。
商の微分より、
KX′′(t)=n{B(t)}2A′(t)B(t)−A(t)B′(t)
です。
A′(t)=πet、B′(t)=πet だから、
KX′′(t)=n{(1−π)+πet}2πet{(1−π)+πet}−(πet)(πet)
です。
分子を整理すると、
πet(1−π)+π2e2t−π2e2t=π(1−π)et
なので、
KX′′(t)=n{(1−π)+πet}2π(1−π)et
です。
t=0 を代入すると e0=1 で、分母は
{(1−π)+π}2=1
なので、
KX′′(0)=nπ(1−π)
となります。
これは二項分布の分散です。
このように、キュムラント母関数は平均と分散を直接取り出せます。
独立な和ではキュムラントが足し算になるため、複数患者の反応数や複数検体の陽性数を合計する場面で考え方が役立ちます。
例題5:コロニー数とポアソン分布
ある抗菌薬処理後のプレートで、一定面積あたりの耐性コロニー数 X がポアソン分布
X∼Poisson(λ)
に従うとします。
平均して1視野あたり 2.4 個のコロニーが観察されるとき、次を求めます。
- P(X=0)
- P(X≥1)
- E[X] と Var(X)
解答
ポアソン分布の確率関数は、
P(X=x)=e−λx!λx(x=0,1,2,…)
です。
ここでは λ=2.4 です。
まず、コロニーが0個の確率は、
P(X=0)=e−2.40!2.40
です。
ここで、
2.40=1,0!=1
なので、
P(X=0)=e−2.4
です。
数値としては、
e−2.4≈0.0907
です。
次に、少なくとも1個観察される確率は、補集合を使って、
P(X≥1)=1−P(X=0)
です。
したがって、
P(X≥1)=1−e−2.4≈1−0.0907=0.9093
となります。
ポアソン分布では、
E[X]=λ,Var(X)=λ
です。
したがって、
E[X]=2.4,Var(X)=2.4
です。
この「平均と分散が等しい」という性質は、生命科学データを見るときの重要な診断点です。
実際のコロニー数データで標本分散が標本平均よりかなり大きいなら、細胞状態のばらつきや局所的な増殖差があり、単純なポアソン分布では足りない可能性があります。
例題6:IC50 の対数スケール
ある化合物の IC50 を X とします。
IC50 は正の値で、実験を繰り返すと倍率方向にばらつくことが多いため、
Y=log10X
を考えます。
ここで、
Y∼N(−6,0.22)
とします。
つまり、log10IC50 の平均が −6、標準偏差が 0.2 です。
- IC50 の中央値を求めてください。
- Y が平均から +1 標準偏差だけ大きいとき、IC50 は中央値の何倍ですか。
- なぜ IC50 は元のスケールより対数スケールで扱いやすいのか説明してください。
解答
まず、
Y=log10X
なので、
X=10Y
です。
対数正規型の分布では、対数を取った変数 Y の中央値が、元の変数 X の中央値に対応します。
ここでは Y の平均も中央値も −6 なので、IC50 の中央値は、
10−6
です。
単位が mol/L なら、
10−6mol/L=1μM
です。
次に、Y が平均から +1 標準偏差だけ大きい値は、
−6+0.2=−5.8
です。
このときの IC50 は、
10−5.8
です。
中央値 10−6 との比を取ると、
10−610−5.8=100.2
です。
数値として、
100.2≈1.58
なので、約 1.58 倍です。
IC50 は濃度なので、0以下にはなりません。
また、実験誤差や生物学的ばらつきは「0.1 μM 増える」という足し算より、「1.5倍になる」「2倍になる」という倍率で現れることがあります。
対数を取ると、倍率の違いが足し算の違いになります。
そのため、正規分布近似、信頼区間、回帰モデルに載せやすくなります。
例題7:細胞生存率の期待値
ある濃度の薬剤を処理したウェルで、細胞が生存する確率を p=0.72 とします。
1ウェル内で独立に観察できる細胞を 100 個とし、生存細胞数を X とします。
- X の分布を答えてください。
- 生存率 R=X/100 の期待値と分散を求めてください。
解答
各細胞について、生存なら 1、非生存なら 0 と考えます。
100個の細胞を独立に観察できると仮定すると、
X∼Bin(100,0.72)
です。
二項分布より、
E[X]=np=100⋅0.72=72
です。
また、
Var(X)=np(1−p)=100⋅0.72⋅0.28
です。
計算すると、
Var(X)=20.16
です。
生存率は、
R=100X
です。
期待値は定数倍の性質より、
E[R]=E[100X]=1001E[X]=10072=0.72
です。
分散では、定数倍するとその定数の2乗が前に出ます。
つまり、
Var(aX)=a2Var(X)
です。
ここで a=1/100 なので、
Var(R)=Var(100X)=10021Var(X)
です。
したがって、
Var(R)=1000020.16=0.002016
です。
この例はシンプルですが、細胞生存率、陽性細胞率、発現細胞割合のようなデータを考える入口になります。
実際の実験では細胞どうしが完全に独立でないことや、ウェル間差があることも多いため、二項分布からのずれを見ることが重要です。
演習で重点的に確認すること
ここまでの内容を問題演習で確認するときは、問題文を丸ごと覚えるよりも、「何を問われている問題か」を分類しておく方が再利用しやすくなります。
特に変数変換を含む章では、次の論点を押さえると見通しがよくなります。
| 論点 | まず確認すること | よくあるミス |
|---|
| 密度関数の正規化 | 全範囲で積分して1になるか | 定数を決めた後に台を書き忘れる |
| 分布関数と密度関数 | F(x)=P(X≤x) と f(x)=F′(x) | 区間外の F(x) や f(x) を書かない |
| 条件付き密度 | 残した範囲の確率で割っているか | 切り取った密度の面積が1でないままにする |
| 平均と中央値の最適性 | 二乗誤差は平均、絶対誤差は中央値 | 絶対値を左右に分けずに微分する |
| 裾確率表示 | E[X] を P(X>t) で表せるか | 非負の場合と一般の場合を混同する |
| 母関数 | 何の母関数かを区別する | 確率母関数、積率母関数、特性関数を混ぜる |
| 変数変換 | 値域、逆像、ヤコビアンを確認する | 逆像の個数や定義域を落とす |
| キュムラント | logMX(t) を微分する | 第4キュムラントを第4中心モーメントと同一視する |
変数変換は3段階で見る
変数変換の問題では、公式をいきなり当てはめるより、次の順番で考えます。
- 変換後の値域を決める
- y=g(x) を満たす x をすべて列挙する
- 各逆像の寄与をヤコビアン付きで足す
連続型で Y=g(X) とおくと、単調な場合は、
fY(y)=fX(g−1(y))dydg−1(y)
です。
ただし、全体で単調でない場合はこのままでは不十分です。
y=g(x) を満たす解が x1(y),x2(y),… と複数あるなら、
fY(y)=i∑fX(xi(y))dydxi
と足し合わせます。
例えば二乗変換では、X が正の範囲だけを動くなら逆像は y の1つです。
一方で、X が正負の両方を取りうるなら、逆像は y と −y の2つになります。
さらに元の X の台が左右非対称な区間なら、y の範囲によって逆像の個数が変わります。
この「逆像の個数が途中で変わる」場合分けが、変数変換で最も落としやすい点です。
問題文を公開ノートに写す必要はありません。
著作権の観点では、問題集の設問をそのまま再掲するのではなく、「単調変換」「複数の逆像」「条件付き密度」「母関数」といった論点名、自作の短い例、解法手順として整理するのが安全です。
答案で使う最小テンプレート
変数変換の答案では、次の形まで書けると安定します。
値域を確認→逆変換を求める→dydxを計算→密度に代入
単調でない変換では、
逆像をすべて列挙→元の台に入るものだけ残す→各寄与を足す
と書き換えます。
特に答案では、最後に
fY(y)=0(otherwise)
を付ける習慣をつけてください。
密度関数は式そのものだけでなく、どの範囲で成り立つかまで含めて答えです。
答案で使える計算Tips
演習では、難しい公式を新しく覚えるよりも、よく出る変形を短い型として持っておくと解答が安定します。
ライプニッツの積分微分公式
t が積分範囲や integrand に入っているときは、積分をそのまま微分できません。
次の形で処理します。
dtd∫atg(x,t)dx=g(t,t)+∫at∂t∂g(x,t)dx
下端が t の場合は符号が変わります。
dtd∫tbg(x,t)dx=−g(t,t)+∫tb∂t∂g(x,t)dx
絶対値誤差
h(t)=E[∣X−t∣]
を扱うときは、
h(t)=∫−∞t(t−x)f(x)dx+∫t∞(x−t)f(x)dx
と分けます。
このとき第1項の微分は、
dtd∫−∞t(t−x)f(x)dx=F(t)
です。
理由は、g(x,t)=(t−x)f(x) とおくと、
g(t,t)=(t−t)f(t)=0
であり、
∂t∂{(t−x)f(x)}=f(x)
だからです。
第2項は、
dtd∫t∞(x−t)f(x)dx=−(1−F(t))
です。
こちらは下端が t なので境界項にマイナスが付きます。
さらに、
∂t∂{(x−t)f(x)}=−f(x)
なので、
∫t∞−f(x)dx=−(1−F(t))
となります。
したがって、
h′(t)=F(t)−(1−F(t))=2F(t)−1
です。
最小点では h′(t)=0 なので、
F(t)=21
となります。
つまり、絶対値誤差を最小にする t は中央値です。
答案では「左右に分ける → ライプニッツで微分 → $2F(t)-1$」まで書ければ十分です。
直感だけで「中央値」と書くと証明になりません。絶対値を外すために積分範囲を分けるところが答案の出発点です。
部分積分
部分積分は、
∫udv=uv−∫vdu
です。
統計では、指数分布やガンマ分布型の積分でよく使います。
例えば、
∫0∞xe−xdx
では、
u=x,dv=e−xdx
と置くと、
du=dx,v=−e−x
なので、
∫0∞xe−xdx=[−xe−x]0∞+∫0∞e−xdx=1
です。
より一般に、
∫0∞xke−xdx=k!
が出てきます。
これは指数分布の k 次モーメントやガンマ分布の計算につながります。
条件付き密度は「残った面積で割る」
ある範囲だけを残した密度は、そのままでは面積が1になりません。
条件 X≥a のもとでの密度は、
g(x)=P(X≥a)f(x)=1−F(a)f(x)(x≥a)
です。
答案では、
∫a∞g(x)dx=1−F(a)1∫a∞f(x)dx=1
まで確認すると、密度関数であることも示せます。
絶対値はまず場合分けする
∣X−t∣ や ∣X∣ が出てきたら、まず絶対値を外せる範囲に分けます。
∣x−t∣={t−xx−t(x<t)(x≥t)
です。
変数変換で Y=∣X∣ や Y=−log∣X∣ を扱う場合も同じで、正負の2つの逆像を考えます。
∣x∣=e−y⇒x=e−y, −e−y
のように、逆像を落とさないことが重要です。
端点と定義域外を必ず書く
連続分布では、端点を < で書くか ≤ で書くかは密度の値には通常影響しません。
ただし、答案では範囲を明示する必要があります。
fY(y)={計算した式0(取りうる範囲)(otherwise)
の形にすると、採点者に「台を把握している」ことが伝わります。
演習の優先順位
この章の演習を解くときは、次の順に固めると効率的です。
- 密度関数・分布関数の基本:正規化、積分、微分の確認
- 期待値の基本性質:平均・分散、平均と中央値の最適性、裾確率表示
- 単調な変数変換:線形変換、対数変換、指数変換
- 単調でない変数変換:二乗、絶対値、複数の逆像
- 台による場合分け:逆像が途中で増減する問題
- 母関数とキュムラント:分布の特徴量を関数から取り出す問題
- 存在しない期待値・分散:重い裾を持つ分布の扱い
最初から重い証明問題まで完全に解こうとすると、変数変換の基本手順がぼやけます。
まずは、値域、逆像、ヤコビアン、定義域外で0、という4点を確実に書ける状態を目標にします。
一般的な確認問題
ここでは薬学の文脈を外して、確率分布と期待値の標準問題を確認します。
統計検定1級では、具体例を読めることに加えて、抽象的な確率変数をそのまま計算できることも必要です。
問題1:離散型確率変数の期待値と分散
確率変数 X の確率関数が次で与えられているとします。
| x | 0 | 1 | 2 | 3 |
|---|
| P(X=x) | 0.1 | 0.2 | 0.4 | 0.3 |
- E[X] を求めてください。
- Var(X) を求めてください。
解答
期待値は、
E[X]=x∑xP(X=x)
です。
したがって、
E[X]=0⋅0.1+1⋅0.2+2⋅0.4+3⋅0.3
です。
計算すると、
E[X]=0+0.2+0.8+0.9=1.9
です。
分散は、
Var(X)=E[X2]−(E[X])2
で求めます。
まず、
E[X2]=x∑x2P(X=x)
なので、
E[X2]=02⋅0.1+12⋅0.2+22⋅0.4+32⋅0.3
です。
計算すると、
E[X2]=0+0.2+1.6+2.7=4.5
です。
したがって、
Var(X)=4.5−(1.9)2
です。
(1.9)2=3.61
なので、
Var(X)=4.5−3.61=0.89
となります。
問題2:密度関数の定数を決める
連続型確率変数 X の密度関数が、
f(x)={cx0(0≤x≤2)(otherwise)
で与えられているとします。
- 定数 c を求めてください。
- P(1≤X≤2) を求めてください。
- E[X] を求めてください。
解答
密度関数なので、全体の面積が 1 です。
∫−∞∞f(x)dx=1
です。
ここでは 0≤x≤2 の範囲だけで正なので、
∫02cxdx=1
です。
積分すると、
c∫02xdx=c[2x2]02=c⋅24=2c
です。
したがって、
2c=1
より、
c=21
です。
次に、
P(1≤X≤2)=∫1221xdx
です。
計算すると、
∫1221xdx=21[2x2]12=41(4−1)=43
です。
最後に期待値です。
E[X]=∫−∞∞xf(x)dx
なので、
E[X]=∫02x⋅21xdx=21∫02x2dx
です。
積分すると、
21[3x3]02=21⋅38=34
です。
したがって、
E[X]=34
となります。
問題3:積率母関数から平均と分散を求める
確率変数 X の積率母関数が、
MX(t)=exp(2t+3t2)
で与えられているとします。
E[X] と Var(X) を求めてください。
解答
積率母関数から直接求める方法もありますが、この形ではキュムラント母関数を使うと早いです。
KX(t)=logMX(t)
なので、
KX(t)=log{exp(2t+3t2)}=2t+3t2
です。
キュムラント母関数では、
KX′(0)=E[X]
KX′′(0)=Var(X)
です。
まず1回微分します。
KX′(t)=2+6t
したがって、
KX′(0)=2
です。
よって、
E[X]=2
です。
次に2回微分します。
KX′′(t)=6
なので、
KX′′(0)=6
です。
したがって、
Var(X)=6
となります。
問題4:変数変換
確率変数 X が区間 (0,1) 上の一様分布に従うとします。
つまり、
fX(x)={10(0<x<1)(otherwise)
です。
Y=−logX とおきます。
Y の密度関数を求めてください。
解答
まず、変換式を逆に解きます。
Y=−logX
なので、
logX=−Y
です。
両辺の指数を取ると、
X=e−Y
です。
したがって、逆変換は、
x=e−y
です。
0<X<1 なので、Y=−logX は 0<Y<∞ を動きます。
連続型の変数変換公式より、
fY(y)=fX(e−y)dyde−y
です。
ここで、
dyde−y=−e−y
なので、
dyde−y=e−y
です。
また、y>0 のとき e−y は (0,1) に入るので、
fX(e−y)=1
です。
したがって、
fY(y)=e−y(y>0)
です。
それ以外では 0 なので、
fY(y)={e−y0(y>0)(otherwise)
となります。
これはパラメータ 1 の指数分布の密度です。
まとめ
この章では、確率変数と確率分布を中心に、統計検定1級で必要になる道具を整理しました。
- 離散型では確率関数 P(X=x) を使う
- 連続型では確率密度関数 f(x) を使い、面積で確率を考える
- 期待値は確率変数の平均的な値であり、分散も期待値で表せる
- 確率母関数は非負整数値の分布に便利
- 積率母関数は積率を取り出す道具
- 特性関数は分布を一意に決め、極限定理で重要
- キュムラント母関数は独立な和を扱うときに強い
- 変数変換では、特に連続型でヤコビアンが重要
確率分布は、単なる公式集ではありません。
副作用人数、服薬忘れ回数、血中濃度、AUC、IC50、細胞生存率、コロニー数のような薬学・生命科学データを、どの確率モデルで表すかを考えるための言語です。